2015年9月17日木曜日

第23回例会

(※ 終了しました)
【 日時 】 2015年11月14日() 13:30~18:15
【 会場 】 東京大学駒場 I キャンパス 2号館 303号室

【 プログラム 】
13:30~15:45 第 I 部 講演 コメント
    講演:米 多(Mi Duo / 東京大学 大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻)
        コメンテータ:松田康博(東京大学 東洋文化研究所 教授)

アジア分断国家による反共同盟構築の試み (1964-1969)
East Asia's Divided Nations' attempt to Establish Anti-communist Military Alliances (1964-1969)

 1945年9月の日本降伏によって第2次大戦は終結するが、日本の支配から解放された朝鮮半島、中国、ベトナムは即時独立を達成できず、それぞれ分断国家への道をたどることになる。欧州に始まった冷戦が、1950年の朝鮮戦争勃発でアジアにも拡大すると、アメリカは、日本や韓国、中華民国と安全保障条約を締結すると共に東南アジアを中心にSEATOを発足させ、各分断線で共産主義勢力と対峙する体制を整えていった。
 この「ハブ・アンド・スポーク」と呼ばれる体制により、中華民国、韓国、南ベトナムは米国の軍事援助を確保できた一方で、国家統一を目指す軍事行動を制限されるようになった。かくして、華・韓・越3国はそれぞれ米国側と交渉しながら、「大陸反攻」「北進統一」を構想し、互いに反共同盟の樹立を模索するようになる。
 この華韓越3国間の反共同盟構築についての従来の研究は、史料公開の制約もあり、1960年代前半までにとどまっていたが、本報告では近年公開された関係各国の外交文書などを用いることで、1964年から1970年前後までのアジア冷戦変容期を中心に検討を進める。また、この時期の冷戦変容への各国の対応について、一国史的枠組みを超えて考察することで、アジア自由主義諸国の相互認識およびそれによる影響を論じていく。



16:00~18:15 第 II 部 講演 コメント
    講演:志村三代子(都留文科大学 文学部 准教授)
    講演:名嘉山リサ沖縄工業高等専門学校 総合科学科 准教授)
        コメンテータ:泉水英計(神奈川大学 経営学部 教授)


サイパンから沖縄へ ―『戦場よ永遠に』の映画化をめぐって―
From Saipan to Okinawa: On Filming of “Hell to Eternity” (1960)

 本発表の目的は、『戦場よ永遠に』に描かれた「サイパンの笛吹き男」を読み解くことによって、冷戦期のハリウッドで描かれたアメリカ/日本/沖縄という三国間の地政学的イメージを検証することである。
 『戦場よ永遠に』は、1944年のサイパン・テニアン戦で1500人もの日本軍人と民間人を投降させ人命を救ったことによりアメリカ国内で一躍有名人となった海兵隊員ガイ・ガバルドンをモデルにした映画作品である。ガバルドンの名声は、アメリカのテレビ番組This is Your Lifeで紹介され、その評判に注目したハリウッドのプロデューサーが映画化を企画した。しかし、彼のキャリアは映画化された際に修正が施された。『戦場よ永遠に』が重要なのは、サイパンが舞台であるにもかかわらず、ロケーション場所がアメリカ占領下の沖縄であり、多数の住民がエキストラとして出演していることから、サイパン戦のイメージが、唯一の地上戦であった沖縄戦のアナロジーとして考えられていることである。
 本発表では、ガイ・ガバルドンの報道、This is Your Lifeで紹介されたガイ・ガバルドンの史実と、映画化作品の差異を検証することによって、冷戦期の海兵隊協力映画としての本作の意義を明らかにしていきたい。